現代のWebサイトは、PCだけでなくスマートフォンやタブレットなど、様々なデバイスでの表示に対応する必要があります。
Google ChromeのDevToolsに搭載されている「Device Mode」を使えば、こうしたマルチデバイスでの表示検証が容易に行えます。
この章では、実機に頼らずモバイル表示の問題を見つける方法や、回線速度・入力操作のシミュレーションについて解説します。
10.1 モバイルデバイスのエミュレーション
Device Modeとは?
- ツールバーのスマホアイコンをクリックすることで有効になる「画面エミュレーションモード」
- ウィンドウがモバイル端末のような外観に切り替わり、レスポンシブデザインの挙動が再現される
主な機能:
- 代表的なスマートフォン(Pixel、iPhone、Galaxyなど)を選択し、画面サイズ・解像度をエミュレート
- 任意の幅・高さで画面サイズを自由に変更可能(ピクセル精度の確認に有用)
- 画面の向きを縦/横で切り替えることでレスポンシブ対応の検証が可能
💡ユースケース:
- ヘッダーがスマホ表示時に崩れる現象を再現
- 特定の端末(例:iPhone SE)で「ボタンが押せない」バグを特定
- 縦画面で正常だったUIが、横画面でははみ出してしまう問題を調査
10.2 タッチイベント、回線速度のシミュレーション
タッチイベントのエミュレーション:
- Device Modeではマウス操作が擬似的なタッチイベントとして処理される
:hover
が効かないモバイル特有の挙動や、ドラッグ操作の反応などを確認できる
センサ・入力系のシミュレーション:
Sensors
パネル(DevToolsのCommand + Shift + P
→「Show Sensors」)を使うと、位置情報やジャイロなどもエミュレート可能
回線速度のシミュレーション:
- Networkパネル、またはDevice Mode上部の「Throttling」ドロップダウンから選択
No throttling
(通常)Fast 3G
Slow 3G
Offline
- 回線速度を意図的に遅くして、画像やJSファイルの読み込みタイミングの遅延やタイムアウトを再現可能
💡ユースケース:
- ローディングスピナーが「3G環境で長く表示されたまま」になる問題を再現・調査
- タッチによるアコーディオンメニューが動かない → タッチイベントの伝播ミスを発見
- 「読み込み完了後にボタンが反応しない」 → 回線速度シミュレーションで遅延読み込みの影響を特定
🧪 実践課題
課題:スマホ表示でのレイアウト崩れと読み込み遅延を調査せよ
- Chrome DevToolsを開き、Device Modeに切り替え
- 表示デバイスを「iPhone 12 Pro」に設定し、画面の縦横を切り替えて崩れがないか確認
- Network設定で「Slow 3G」を選択し、画像やJSの読み込み順や遅延があるかを確認
- ボタンのタップイベントが意図通りに動作しているかを検証
📝 まとめ
- Device Modeはマルチデバイス対応のフロントエンド検証に不可欠
- 実機に頼らず、画面サイズ・向き・タッチイベント・回線速度を再現可能
- レスポンシブのバグや、モバイル特有のUI問題を早期に発見できる