Google Cloud Platform エンジニア向け教科書:実践から認定まで : 第7章:VPC(Virtual Private Cloud)ネットワークとサブネット:GCPの「専用プライベートネットワーク」

  • mhmh
  • GCP
  • 6月 9, 2025
  • 0 コメント

GCPで仮想マシン(Compute Engine)を動かしたり、データベースを構築したりする際、それらのリソースがお互いに通信したり、インターネットに接続したりするためには「ネットワーク」が必要です。GCPでは、このネットワーク環境を「VPC(Virtual Private Cloud)ネットワーク」*という形で提供しています。

例えるなら、VPCネットワークは、あなた専用の「プライベートな仮想的な敷地」です。そして、その敷地をさらに区切るための「区画」が「サブネット」です。

1. VPCネットワーク:GCP上の「あなた専用の仮想的な敷地」

VPCネットワークは、GCP上に構築される論理的に隔離された、あなた専用のプライベートネットワークです。物理的にはGoogleの広大なネットワークインフラの一部ですが、論理的にはあなただけの独立したネットワーク空間として機能します。

イメージしてみてください:

あなたが新しい家を建てるとします。まず、大きな土地(Googleのデータセンター)の中から、あなた専用の「敷地」を確保します。この敷地がVPCネットワークです。この敷地内には、あなたが必要とする様々な建物(仮想マシン、データベースなど)を自由に建てることができます。

  • VPCネットワークの主な特徴:
    • グローバルな範囲: VPCネットワークは、特定のリージョンやゾーンに限定されず、グローバルな範囲を持ちます。これは、一つのVPCネットワークを世界中のリージョンにまたがって利用できるということです。
    • 論理的な隔離: あなたのVPCネットワークは、他のGCPユーザーのVPCネットワークから完全に隔離されています。これにより、セキュリティとプライバシーが確保されます。
    • 自由なルーティング: VPCネットワーク内では、あなたが定義したルールに基づいて、リソース間の通信を自由にルーティングできます。
    • デフォルトVPCとカスタムVPC:
      • GCPプロジェクトを作成すると、あらかじめdefaultというVPCネットワークが自動的に作成されます。これはすぐに使い始められるようにするためのものです。
      • しかし、より複雑な要件やセキュリティ要件がある場合は、自分で新しくVPCネットワークを作成する「カスタムVPC」を使うことが一般的です。

2. サブネット:VPCネットワーク内の「区画」

VPCネットワークという大きな敷地の中に、さらに細かく区切られた「区画」がある、それが「サブネット(Subnetwork)」です。各サブネットには、それぞれ固有のIPアドレス範囲(CIDRブロック)が割り当てられます。

イメージしてみてください:

先ほどのあなたの「敷地(VPCネットワーク)」の中に、さらに「リビングエリア」「寝室エリア」「ガレージ」のように、それぞれの目的ごとに部屋を区切るようなものです。それぞれの部屋(サブネット)には、そこに属する家具や家電(仮想マシン、データベースなど)が配置されます。

  • サブネットの主な特徴:
    • リージョンに紐付く: サブネットは、必ず特定のリージョンに紐付けられます。例えば、「東京リージョン用のサブネット」「大阪リージョン用のサブネット」という形です。
    • IPアドレス範囲の定義: 各サブネットには、10.128.0.0/20 のような形でIPアドレスの範囲が割り当てられます。この範囲内のIPアドレスが、そのサブネット内に作成されるリソース(仮想マシンなど)に割り当てられます。
    • 通信の分離: サブネットを分けることで、アプリケーションサーバーとデータベースサーバーを異なるサブネットに配置し、それぞれの通信ルールをより細かく制御するといったことが可能になります。これはセキュリティと管理のしやすさにつながります。
    • デフォルトサブネット: default VPCネットワークには、主要な各リージョンにデフォルトでサブネットが作成されています。

VPCネットワークとサブネットの関係性

  • VPCネットワークが全体: まずVPCネットワークという大きなネットワーク空間を作成します。
  • サブネットが部分: そのVPCネットワークの中に、必要な数のサブネットを作成します。各サブネットは異なるリージョンに配置できます。
  • リソースはサブネット内に配置: 仮想マシンなどのリソースは、必ずいずれかのサブネット内に配置されます。そして、そのサブネットのIPアドレス範囲から内部IPアドレスが割り当てられます。

例で考えてみましょう:

  1. あなたはまず「my-production-vpc」というVPCネットワークを作成しました。(敷地を確保)
  2. 次に、このVPCネットワーク内に以下のサブネットを作成します。
    • asia-northeast1-subnet-app」(東京リージョン): ウェブアプリケーションのサーバー用(リビングエリア)
    • asia-northeast1-subnet-db」(東京リージョン): データベースサーバー用(寝室エリア)
    • asia-northeast2-subnet-app」(大阪リージョン): 大阪ユーザー向けのアプリケーションサーバー用(別荘)
  3. これで、東京のアプリケーションサーバーはasia-northeast1-subnet-appに、データベースはasia-northeast1-subnet-dbに、といった形で配置し、それぞれのサブネットのIPアドレス範囲内で内部通信が行われます。

まとめ:ネットワーク設計の基礎

VPCネットワークとサブネットは、GCPでシステムを構築する際の、ネットワーク設計の最も基本的な部分です。

  • VPCネットワーク: あなた専用の仮想的なプライベートネットワーク空間。グローバルに広がる。
  • サブネット: VPCネットワーク内の「区画」。特定のリージョンに紐付き、IPアドレス範囲を持つ。リソースはサブネット内に配置される。

これらを適切に設計することで、セキュリティが高く、効率的で、将来の拡張にも対応しやすいネットワーク環境をGCP上に構築できるようになります。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、VPCネットワークとサブネットの概念をしっかり理解することが、GCPのネットワークを使いこなすための第一歩です!

mh

Related Posts

  • mhmh
  • GCP
  • 6月 12, 2025
  • 27 views
Google Cloud Platform エンジニア向け教科書:実践から認定まで : 第8章:ファイアウォールルール:あなたのGCPリソースを守る「交通整理係」

  • mhmh
  • GCP
  • 6月 6, 2025
  • 65 views
Google Cloud Platform エンジニア向け教科書:実践から認定まで : 第6章:Cloud Shellの活用:GCPを「どこからでも手軽に操作できる秘密基地」

You Missed

Kubernetes Learning 第35章:GitOpsとは?~Kubernetes運用をもっとスマートにする考え方~

  • 投稿者 mh
  • 6月 13, 2025
  • 21 views

Google Cloud Platform エンジニア向け教科書:実践から認定まで : 第8章:ファイアウォールルール:あなたのGCPリソースを守る「交通整理係」

  • 投稿者 mh
  • 6月 12, 2025
  • 27 views

Kubernetes Learning 第34章:values.yamlのカスタマイズ ~環境ごとの設定変更をシンプルに~

  • 投稿者 mh
  • 6月 11, 2025
  • 32 views

現場で使えるChrome DevTools実践ガイド 第13章:拡張機能・Snippetsの活用

  • 投稿者 mh
  • 6月 10, 2025
  • 44 views

Google Cloud Platform エンジニア向け教科書:実践から認定まで : 第7章:VPC(Virtual Private Cloud)ネットワークとサブネット:GCPの「専用プライベートネットワーク」

  • 投稿者 mh
  • 6月 9, 2025
  • 48 views

Kubernetes Learning 第33章:Helm Chartの構成 ~Kubernetesアプリをパッケージ化する設計図~

  • 投稿者 mh
  • 6月 8, 2025
  • 53 views