
Javaアプリケーションのビルドツールとして、あなたはおそらく Maven を使った経験があると思います。pom.xml
で依存関係やプラグインを定義し、mvn clean install
でビルドするスタイルですね。
一方、Android開発では、ビルドツールとして Gradle(グレードル) が標準的に使われます。GradleはMavenと同じく「依存関係管理」「ビルド自動化」を担うツールですが、より柔軟でカスタマイズ性が高く、Android向けに最適化された設計になっています。
■ まずはプロジェクト構造を比較してみましょう
Mavenプロジェクトの典型的な構造:
myapp/
├── pom.xml
└── src/
└── main/
├── java/
└── resources/
Android Studioで生成されるAndroidプロジェクトの構造:
MyApplication/
├── build.gradle(プロジェクト全体)
├── settings.gradle
├── app/
│ ├── build.gradle(アプリモジュール)
│ ├── src/
│ │ ├── main/
│ │ │ ├── java/ (アプリのJavaコード)
│ │ │ ├── res/ (UIなどのリソース)
│ │ │ └── AndroidManifest.xml
👉 Androidプロジェクトは、ルートプロジェクト + アプリ(モジュール)という構造です。
👉 app/build.gradle
が Maven で言うところの pom.xml
に近い感覚です(ただし柔軟性は高いです)。
■ GradleとMavenの大きな違い
観点 | Maven | Gradle |
---|---|---|
定義ファイル | XML(静的) | Groovy/Kotlin DSL(動的スクリプト) |
柔軟性 | 高くない(XMLの制約) | 非常に高い(条件分岐やループも可) |
Android対応 | 非対応(公式には) | Android公式ツールチェーン |
処理速度 | 比較的遅い | キャッシュや並列ビルドにより高速化可能 |
マルチモジュール構成 | 可能だがやや複雑 | 標準的にサポートされている |
■ Gradleの定義ファイル:Groovy or Kotlin DSL
Gradleでは、build.gradle
(または build.gradle.kts
)にJavaライブラリの依存やビルド設定を書きます。たとえば:
dependencies {
implementation 'androidx.core:core-ktx:1.12.0'
implementation 'com.google.android.material:material:1.10.0'
testImplementation 'junit:junit:4.13.2'
}
Mavenの <dependency>
タグよりも簡潔で柔軟です。条件分岐やカスタムタスクも書けます。
■ Android特有のGradle設定
Androidでは、build.gradle
の中に android {}
ブロックが登場します。これはMavenには存在しない構造です:
android {
compileSdk 34
defaultConfig {
applicationId "com.example.myapp"
minSdk 21
targetSdk 34
versionCode 1
versionName "1.0"
}
buildTypes {
release {
minifyEnabled false
proguardFiles getDefaultProguardFile('proguard-android-optimize.txt'), 'proguard-rules.pro'
}
}
}
👉 このブロックで、SDKのバージョンやアプリのID、ビルドタイプなどを指定します。
👉 Android開発に必要なパラメータがここに集中しているため、最初はここを読み解くことが鍵になります。
■ Gradleのビルドコマンド
Android Studioでは基本的にGUI操作ですが、Gradleのコマンドラインも使えます:
./gradlew build # アプリ全体をビルド
./gradlew clean # ビルド成果物の削除
./gradlew assembleDebug # デバッグ用APKの生成
Gradleは gradlew
(Gradle Wrapper)を通してプロジェクトローカルに固定バージョンを持てるため、ビルド環境の再現性も高いです。
まとめ:Maven経験は大きなアドバンテージ
Mavenを理解しているあなたにとって、Gradleは「より柔軟なビルドDSL(ドメイン固有言語)」としてすぐに馴染めるはずです。ただし、Android特有の設定がGradleに密接に組み込まれている点が、最大の違いです。
最初は「Groovyの文法がよくわからない…」「どこに何を書くのかわからない」と感じるかもしれませんが、パターンが決まっているので、慣れれば効率よく扱えるようになります。