Google Cloud Platform エンジニア向け教科書:実践から認定まで : 第2章:リージョンとゾーン、グローバルリソース:GCPの「物理的な場所」の考え方

  • mhmh
  • GCP
  • 6月 1, 2025
  • 0 コメント

GCPでサービスを利用する際、私たちは仮想マシンやデータベースなどのリソースを「どこに置くか」ということを意識する必要があります。これは、私たちのデータが物理的にどこかのサーバーに保存されるため、とても重要な概念です。

GCPでは、この「物理的な場所」を管理するために、「リージョン」「ゾーン」「グローバルリソース」という3つの概念を使います。例えるなら、

  • リージョン:国や広域な地域(例:日本、アメリカ東部)
  • ゾーン:リージョン内にある、独立したデータセンターの集まり(例:大阪の特定のデータセンター)
  • グローバルリソース:特定の場所に縛られず、世界中から利用できるサービス(例:世界中のユーザーにコンテンツを届ける配信ネットワーク)

といったイメージです。

リージョン:広域な地域単位の「データセンター群」

まず「リージョン」です。GCPのリージョンは、世界中に分散して配置されています。各リージョンは、地理的に近い場所に複数の独立したデータセンター(後述の「ゾーン」)が集まって構成されています。

イメージしてみてください:

あなたが大手企業で、東京、大阪、福岡にそれぞれ大きな拠点(支社)を持っているとします。それぞれの拠点には、独立したITインフラが整備されているとします。この「東京」「大阪」「福岡」がGCPの「リージョン」に相当します。

  • 何のために分かれているの?
    • レイテンシ(遅延)の最適化: ユーザーに近いリージョンにリソースを配置することで、データ転送の遅延を減らし、より高速なサービス提供が可能になります。例えば、日本のユーザー向けのウェブサイトは「東京」リージョンや「大阪」リージョンに置くのが一般的です。
    • データの主権と規制: 国によっては、特定の国のユーザーデータはその国の中に置かなければならない、という法律や規制(データの主権)があります。リージョンを選択することで、これらに対応できます。
    • 災害対策(ディザスタリカバリ): あるリージョンで大規模な災害(地震、洪水など)が発生しても、別のリージョンにバックアップや冗長構成を持っておけば、サービスを継続できます。
  • :
    • asia-northeast1 (東京)
    • asia-northeast2 (大阪)
    • us-central1 (アイオワ)
    • europe-west1 (ベルギー)

ゾーン:リージョン内にある独立した「データセンター群」

次に「ゾーン」です。各リージョンは、最低でも3つ以上の「ゾーン」で構成されています。ゾーンは、リージョン内の特定のデータセンター群を指し、それぞれが独立した電源、冷却設備、ネットワーク接続を持っています。

イメージしてみてください:

先ほどの「東京」という支社の中に、さらに「第1サーバー室」「第2サーバー室」「第3サーバー室」というように、それぞれ独立した設備を持つ部屋が複数あるとします。これらが「ゾーン」です。

  • 何のために分かれているの?
    • 高可用性(High Availability): 同じリージョン内でも、異なるゾーンにリソースを分散して配置することで、1つのゾーンで障害が発生しても、他のゾーンでサービスを継続できます。例えば、あなたのウェブサイトのサーバーを、asia-northeast1-aasia-northeast1-bという異なるゾーンに分けて配置しておけば、片方のゾーンに問題が起きてもサイトは動き続けます。これは「ゾーン障害」に対する対策になります。
  • :
    • 東京リージョン (asia-northeast1) の場合:
      • asia-northeast1-a
      • asia-northeast1-b
      • asia-northeast1-c

グローバルリソース:特定の場所に縛られない「世界規模のサービス」

最後に「グローバルリソース」です。これは、特定のリージョンやゾーンに紐づかず、GCP全体、つまり世界中からアクセス・利用できるサービスのことです。

イメージしてみてください:

あなたの会社には、どの支社からでも使える「全社共通のポータルサイト」や「社員名簿システム」があるとします。これらは特定の拠点に依存せず、どこからでもアクセスできますよね?これが「グローバルリソース」に近いです。

  • 何のためにあるの?
    • 世界中のユーザーに均一なサービスを提供したい場合。
    • リージョンやゾーンという物理的な制約を受けずに、一元的に管理したいリソースの場合。
  • 主なグローバルリソースの例:
    • Cloud DNS: ドメイン名とIPアドレスの変換を行うサービス。ウェブサイトのアドレスを解決するのに使われます。世界中どこからでも同じドメイン名でアクセスできるように、グローバルに管理されています。
    • Cloud CDN (Content Delivery Network): ウェブサイトの画像や動画などのコンテンツを、ユーザーに最も近いエッジロケーション(データセンター)にキャッシュして配信するサービス。これにより、世界中のユーザーがコンテンツを高速に取得できます。
    • Cloud Load Balancing (一部): グローバルなロードバランサは、世界中のユーザーからのリクエストを、最も近いリージョンのバックエンドに振り分けることができます。
    • Cloud IAM: ユーザーの権限管理サービス。どのプロジェクトに、誰が、どんな権限を持つか、という情報はグローバルに管理されます。
    • Cloud Storage (バケット名): オブジェクトストレージであるCloud Storageの「バケット名」はグローバルで一意である必要があります。ただし、バケットの中のデータ自体は特定のリージョンに保存されます。

まとめ:リソース配置の考え方

GCPでリソースを配置する際には、以下の点を考慮します。

  1. ユーザーに地理的に近いリージョンを選ぶ: これがサービスのレスポンス速度に直結します。
  2. 高可用性を求めるなら、複数のゾーンに分散配置する: ゾーン障害に備えるためです。
  3. 世界中から利用したいなら、グローバルリソースを活用する: 例えば、Cloud DNSやCloud CDNなど。

これらの概念は、GCPで堅牢で高性能なシステムを構築するための土台となります。実際にサービスをデプロイする際に、どのリージョンやゾーンを選ぶか、どのリソースがグローバルなのかを意識することで、より良いアーキテクチャを設計できるようになります。

mh

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