Google Cloud Platform エンジニア向け教科書:実践から認定まで : 第12章:Cloud CDN(Content Delivery Network):あなたのWebサイトを「世界中のユーザーに超高速で届ける宅配便ネットワーク」

  • mhmh
  • GCP
  • 6月 20, 2025
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Webサイトを公開した際、画像や動画、CSS、JavaScriptファイルなどの「静的なコンテンツ」は、サイトの表示速度に大きく影響します。もし、日本のWebサイトをアメリカのユーザーが見ようとした場合、データが太平洋を越えて届くまでに時間がかかり、表示が遅くなってしまいますよね。

そこで役立つのがCDN(Content Delivery Network)です。GCPが提供するCDNサービスが「Cloud CDN」です。

例えるなら、Cloud CDNは、あなたのWebサイトのコンテンツ(画像や動画など)を、世界中のユーザーの「最も近くの配送拠点(キャッシュサーバー)」に事前に配置しておき、注文(アクセス)があったらそこから超高速で届ける「国際宅配便ネットワーク」のようなものです。

CDN(Content Delivery Network)とは?

CDNは、Webコンテンツ(特に静的なファイル)を、ユーザーに地理的に近い場所に分散配置されたサーバー(エッジロケーションまたはキャッシュサーバーと呼ばれる)にキャッシュ(一時的に保存)することで、コンテンツの配信を高速化し、サーバーの負荷を軽減する仕組みです。

Cloud CDNとは?

Cloud CDNは、Googleの巨大なグローバルネットワークを活用した、高性能かつスケーラブルなフルマネージドのコンテンツ配信ネットワークサービスです。

  • 何ができるの?
    • あなたのGCP上(例えば、Cloud StorageやCompute Engine、GKEのWebサーバー)にある静的なコンテンツ(画像、動画、CSS、JavaScript、HTMLファイルなど)を、世界中のGoogleのエッジロケーションにキャッシュします。
    • ユーザーがコンテンツをリクエストすると、最も近いエッジロケーションからコンテンツが配信されます。
  • 特徴:
    • 超高速なコンテンツ配信: ユーザーから地理的に近い場所からコンテンツが配信されるため、表示速度が大幅に向上します。これはユーザー体験の向上に直結します。
    • オリジンサーバーの負荷軽減: コンテンツがエッジロケーションにキャッシュされるため、元々のコンテンツがあるサーバー(オリジンサーバーと呼びます。GCPではCloud Storageバケットやロードバランサのバックエンドなど)へのアクセスが減り、サーバーの負荷が軽減されます。これにより、サーバーリソースを効率的に利用でき、スケーリングコストを抑えられます。
    • グローバルな範囲: Googleの広大なネットワークを活かし、世界中の多数のエッジロケーションを持っています。
    • HTTP(S) ロードバランサとの連携: Cloud CDNは、GCPの外部HTTP(S) ロードバランサと連携して機能します。外部HTTP(S) ロードバランサのバックエンドサービスに対してCloud CDNを有効化することで利用できます。
    • SSL/TLS対応: HTTPSトラフィックもサポートし、セキュリティを確保したままコンテンツを配信できます。
    • キャッシュ無効化 (Invalidation): キャッシュされたコンテンツを最新のものに更新したい場合、Cloud CDNのキャッシュを強制的にクリアする(無効化する)ことができます。

Cloud CDNの仕組み(簡易版)

  1. コンテンツの準備: あなたのWebサイトの静的なコンテンツを、GCP上のCloud StorageバケットやWebサーバー(Compute Engineなど)に配置します。これらが「オリジンサーバー」になります。
  2. 外部HTTP(S) ロードバランサの設定: 外部HTTP(S) ロードバランサを設定し、バックエンドサービスとしてオリジンサーバーを指定します。このバックエンドサービスに対してCloud CDNを有効化します。
  3. 最初のアクセス: あるユーザー(例えば、アメリカのユーザー)があなたのWebサイトに初めてアクセスし、画像ファイルをリクエストしたとします。
    • リクエストはまず、外部HTTP(S) ロードバランサに到達します。
    • ロードバランサは、このリクエストをCloud CDNに渡し、Cloud CDNは最も近いアメリカのエッジロケーションでその画像ファイルをキャッシュに持っているか確認します。
    • まだキャッシュにない場合、Cloud CDNはその画像ファイルをオリジンサーバー(例: 東京のCloud Storage)から取得し、そのエッジロケーションにキャッシュします。そして、ユーザーに画像を返します。
  4. 2回目以降のアクセス: 次に、別のアメリカのユーザーが同じ画像ファイルをリクエストしたとします。
    • リクエストは再びロードバランサを介してCloud CDNに到達します。
    • 今度は、アメリカのエッジロケーションに画像がキャッシュされているため、オリジンサーバーに問い合わせる必要なく、エッジロケーションから直接ユーザーに画像が返されます
    • これにより、データが遠くまで取りに行く必要がなくなり、応答速度が大幅に向上します。

Cloud CDNの活用シナリオ

  • グローバルWebサイト: 世界中のユーザーに高品質なWeb体験を提供したい場合に最適です。
  • 大量の画像や動画を配信するサイト: eコマースサイト、ニュースサイト、メディアサイトなど。
  • APIからの静的コンテンツ配信: 例えば、モバイルアプリの静的なリソース(画像アイコンなど)をCDN経由で配信する。
  • ソフトウェアのダウンロードファイル配信: 大容量のファイルを高速かつ安定してダウンロードさせたい場合。

まとめ:Webパフォーマンスの鍵

Cloud CDNは、現代のWebアプリケーションにおいて、ユーザー体験とサービスの安定性を大きく左右する重要なサービスです。

  • Webサイトの表示速度を大幅に改善し、ユーザーの離脱率を低下させます。
  • オリジンサーバーの負荷を軽減し、運用コストとスケーリングの複雑さを減らします。
  • 外部HTTP(S) ロードバランサとの連携が必要なことを覚えておきましょう。
  • グローバルに展開するサービスであれば、Cloud CDNの導入はほぼ必須と言えるでしょう。

まずは、簡単な静的WebサイトをCloud Storageバケットにデプロイし、そのバケットをバックエンドとした外部HTTP(S) ロードバランサでCloud CDNを有効化してみましょう。実際にキャッシュヒット率やレイテンシの変化をモニタリングしてみると、Cloud CDNの威力がよくわかるはずです。

mh

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